
タイ在住のみなさんなら、一度は思ったことがあるはず。タイのバスに乗るのは、ハードルが高い!
そもそもアピールしなければ止まってくれず、冷房付きバスでは乗務員に行き先を伝えなければならない。時刻表なんて存在せず、GPS付きバスはアプリで位置を確認できるものの、GPSなしバスはいつ来るのかまったくの謎。油断してスマホを見ていたら、目の前をバスが通り過ぎた!なんてことも日常茶飯事。しかも冷房付きバスは風邪をひくほど寒く、渋滞に巻き込まれると急発進・急停車の連続の上、進まないときは何時間も立ち往生することも…。
日本では「安全のため、バスが止まってからお立ちください」とアナウンスが流れますが、タイでは降りるとき、止まる前から扉の前に移動してスタンバイするのが常識。
今回は、そんな「タイのバスの難しさ」を身をもって体験した、ある日の出来事をお話しします。
事件が起こったのは、昨年私がまだタイ語学留学中だった頃。前から気になっていたノンタブリーのカフェ「Aimer Bistro Cafe」へ行った帰りのことでした。行きはアプリで調べながら、バスを乗り継いで昼過ぎに最寄りに到着。そこから20分ほど歩いてカフェへ。カフェを堪能した後、せっかく遠出したのでカフェ周辺を散歩。夕方で比較的涼しかったこともあり、かれこれ1時間ほど歩いた気がします。
さて、そろそろ歩き疲れたので帰ろうと大通りに出たところで、ふと通り過ぎるバスを見て「これで帰れるかも?」とひらめきました。アプリを開いてみると、なんと!その大通りから私の最寄り駅まで一本で帰れるバスがあるではありませんか。しかも高速道路を通るバスのようで、「しめた!これは早く帰れる!」と意気揚々とバス停へ。
件のバスは166番。ノンタブリーとアヌサワリー(=ヴィクトリーモニュメント)を結ぶ路線です。
GPSでバスの位置を確認し、近づいてきたところで思い切って手を上げ「乗りますアピール」をしました。無事にバスに乗り込み、乗務員さんに「アヌサワリーカ」と伝えたところ、返ってきたのは衝撃の一言。
「このバスはアヌサワリーには行かないよ」
えっ?と思い、慌ててアプリの路線図を見せると、なんと166番は「上りと下りが一部同じ道を通る」というややこしい仕組み。つまり、私が乗ったのは、ノンタブリーのさらに奥へ向かう逆方向のバスだったのです。

次のバス停で急いで降り、帰りの路線バスを捕まえるべく作戦変更。通る全ての166番バスを止めて「アヌサワリー行きますか?」と一台一台の乗務員さんに尋ねることにしました。
しかし……一台目、敗北。二台目、敗北。三台目も、敗北。「もしかして全部、奥に行くやつ…?」と半泣きになったそのとき
「アヌサワリーに行くよ!」
救世主のような返事が!ようやく正解の166番に乗ることができ、高速をビューンと走り抜けて帰路へ。
こうして、私のバス迷走記は無事に幕を閉じました。
タイのバスは本当に一筋縄ではいきません。でも、だからこそ奥が深くて、どこかワクワクするものがあります。私はバスに乗るたび、まるで小さな冒険に出かけているような気分になるんです。
特に、あの冷房なしの古いバスが大好きで、風を感じながら街を走る時間は何にも代えがたい魅力があります。
ただ、最近では「近いうちにすべての バスが冷房付きになるかもしれない」という噂も耳にします。もしそれが本当なら今のうちに、あのレトロなバスにたくさん乗っておきたいものですね。
(編集部 ティウ)
タイ自由ランド 2025年12月5日号掲載



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