ひと昔前、韓国ドラマが日本で大ヒットし、ドラマの撮影場所を巡るツアーに行ってきました!なんて人もたくさん見かけました。
ポテンシャルのあるエンタメは海を渡って国外でもヒットするわけですが、数年前から男性同士の恋愛模様を描いたタイのBL(ボーイズラブ)ドラマが日本でも人気というニュースを見ることが増えました。中には、タイのBL好きが高じてタイに語学留学に来ました!なんて人もいるようなんです。
A子さんは日本での仕事を辞めて、現在、タイに語学留学中。
2021年のコロナが蔓延し、外出禁止令も出ていたころ、友人からYouTubeで無料で公開しているタイのBLドラマを紹介されました。それよりさらに前に、日本では「おっさんずラブ」という男性同士の恋愛模様を描いたドラマがヒットしていたため、BLには特に抵抗がなかったそうです。
試しに勧められたBLドラマを見てみると、その面白さにはまってしまい、日本語字幕でタイのBLドラマがたくさん見られるU‐nextをすぐに契約し、コロナが徐々に収まってくると、東京にあるタイ語学校に通ったり、有給を使ってタイに来ては、好きな俳優のイベントに参加したりと、いわゆる〝推し活〟に励む生活に変わりました。

A子さん推しのタイ俳優のGemini(ジェミナイ)氏の登場するイベント会場(A子さん撮影)
そんな情熱と行動力のあるA子さんが、最終的には、それならタイに留学してしまおう!と実行するまでになったわけですが、それにはいくつかきっかけがありました。
ひとつは、通っていたタイ語学校は週に1回の授業だったため、タイ語が思うように上達せず、押しの俳優がインスタライブをするときなど、何を話しているのか理解できず、もどかしさが常にあったこと。さらに、通っていた学校にタイに語学留学した人がいて、話しを聞くうちに自分もタイに語学留学できるのではと考えるようになりました。
一方、もうひとり、タイで半年の語学留学を終えたばかりのB子さんは大学生。大学を休学し、タイに語学留学をしました。
B子さんがタイのBLに出会った時期は、A子さんとほぼ同じで、コロナ禍にYouTubeで配信しているタイのBLドラマを発見すると、その面白さに魅力され、すぐにU‐nextを契約したそうです。
B子さんは、もともとBL好きだそうで、日本、台湾、韓国のBL作品をよく見ていましたが、その中でもタイのBLドラマはクオリティーや面白さが断然違っていたとのこと。
その後すぐに、東京のタイ語学校に通い始めたり、タイ料理屋でバイトするまでになりましたが、学生であるため、留学という選択はあきらめていたそうです。
卒業論文を大好きなタイに結び付けて書こうと考えていたところ、研究室の先生から、過去に現地に留学してフィールドワークをしていた学生がいるとアドバイスをもらい、急に留学が現実になったといいます。

様々なタイのBLドラマに使用されるカフェ(B子さん撮影)
ここで筆者、A子さんB子さん両者にタイBLドラマの面白さ、クオリティーの高さは具体的にどういうところ?と、詳しく聞いてみました。以前、日本のニュースで見た、タイのBLドラマに夢中の日本人女性も、全く同じことを語っていた からです。
主人公の2人がたくさんの困難を乗り越えて、最終的にハッピーエンドで終わる。タイのBLドラマはほとんどがベタな展開だけれども、見終わった後は幸せな気持ちになると魅力を語るA子さん。
一方、もともとBLドラマに詳しいB子さんの説明によると、BLの作品はマイナーなジャンルなので、1話の放送時間が30分と短かったり、撮影現場やセットなども一般的なテレビドラマなどに比べると見劣りするものが多い中、タイのBLドラマはタイの人気タレントを起用し、脚本も撮影も日本で人気のテレビドラマシリーズに引けを取らないクオリティーとのこと。さらには、1話60分全12話でシリーズが完結するなど、1話の尺も、1シリーズでの放送回数もテレビドラマと変わらない。そのレベルの作品がたくさん出てきて、見飽きることがないと具体的に答えてくれました。
(ここでB子さんに直接調べてもらったところ、2025年4月の時点でタイのBL作品は436作品ありました。)
それを聞いて、「なるほど!」と人気の謎がとけた筆者です。もともと、タイは性のマイノリティーに寛容な国ですので、過去にオカマ達がバレーボールに励む「アタックナンバーハーフ」といったコメディ映画や女性同士の恋愛を描いたテレビドラマなど見かけたことがありますし、BLに目を付けたテレビ局のセンスはなかなかタイらしくて素敵だなと感じました。
一方で、なぜタイでは、そんなにクオリティーの高いBLドラマを量産できるのでしょうか。タイはお金持ちは、とんでもなくお金持ちの国ですので、テレビ局は製作費をたっぷり掛けることができるのでしょうか。

タイの待ちを歩いていると、推しの看板を発見!(A子さん撮影)
さて、そんな理由からタイに語学留学することになったA子さんとB子さんですが、2人ともタイの文化や気候、食事、タイ人のおおらかな人間性などとても気に入っているようです。
タイでも推し活に励んでいるA子さんの生活は、午前中は日本で通っていたタイ語学校と提携をしている語学学校に通い、夕方は推しのイベントに参加し、その合間に学校の復習や課題をこなすなど、とても充実しています。タイ語学校では、タイの BL好きの日本人もいて、情報交換も活発にしているとのこと。
〝推し活〟とは、バンコク隣のノンタブリー県にあるインパクトのコンサートや催しに行くことなのかなと筆者は想像していましたが、ほかにも、映画やドラマの試写会、上映会やショッピングモールなどでよく見かける、有名人が来るイベント、さらには空港でのお出迎えお見送りなどもあるそうです。A子さんは、数日に一度は直接〝推し〟に会っていて、それは今でも信じらないとのこと。 興味深いのは、イベントに集まるファンはタイ人、日本人ほか、中国人、台湾人、ミャンマー人などもたくさんいるそうです。

屋外のイベント会場にて、手製の立て看板で応援するタイ人(A子さん撮影)
一方のB子さんは、大学生ですので、午前中は語学学校に通い、午後は卒論のためのフィールドワークを行ったりとイベントに参加する時間はあまりありません。タイではバイトができないため、屋台のご飯を食べたり、バスを利用したりとかなり切り詰めた生活をしていますが、ドラマの撮影場所になった有名スポットに行く〝聖地巡り〟をしているそうで、B子さんもタイを満喫しています。
BLドラマの舞台は都会のモールだったり、お洒落なカフェだったりと、キラキラしている場面がほとんどで、実際にバンコクに来たときは、道がぼこぼこしていたり、屋台がずらっと並んでいて、ドラマの世界とはかなり違ったというB子さんですが、ご飯が安く食べられたり、のんびり過ごせるので、現実のタイの生活もとても気に入っていると語ります。

タイBLの撮影場所として有名なラマ8世橋。聖地巡礼でも有名な場所(B子さん撮影)
タイ生活を謳歌している2人ですが、逆にタイに来てからのトラブルや大変だったことは?と質問すると、2人に共通していたのが、タイの移住先をイミグレに申請する『TM30』でした。
A子さんは、ビザの申請書類はタイの語学学校と連携している日本のタイ語学校が準備してくれたため、特に問題はなかったそうですが、日本にいる間にエージジェントを通して1年契約で借りたコンドミニアムのタイ人オーナーがTM30の重要性を全くわかってくれず、書類を準備して申請するまでに何度もやりとりし、とても大変だったと語ります。
B子さんはTM30のトラブルをネットで読んで事前に知っていたため、最初はホテルを予約していましたが、初日からアパート探しに翻弄し、外国人がたくさん住んでいてTM30に理解があるオーナーがいる住まいを必死で探したとのこと。
やはり、タイ移住で大変なのは居住地を決める・申請する、ビザを取得する、この3つのようです。
ドラマの世界だけでなく、タイの生活もとても気に入っている2人に、最後に、これからもタイで暮らしていきたいですか?と質問してみました。
タイ語留学が終わってしまい、現在は日本にいるB子さんですが、タイの生活がとても合っているので、タイに戻りたい。就活ではタイの現地採用の就職先なども探しているといいます。
一方、A子さんからは意外な答えが返ってきました。最初はタイに就職するのもいいかもしれないと考えていたけれども、イベントが夕方から始まることが多いので、タイの就業時間と重なってしまい行けなくなってしまう。だったら日本で働いて、有給を使ってタイに来た方が効率的なのでは。とのこと。なるほど!タイに移住したからといって〝推し〟といつでも会えるというわけではなさそうです。推し活って奥が深い!

チェンマイにもタイのBLドラマで撮影される有名な聖地がある!(B子さん撮影)
さて、このインタビュー記事を読んで、タイのBLドラマが気になり始めたという方もいるかもしれませんが、A子さんB子さんともにおすすめなのは、タイ大手のGMM(グラミー)社の作品だそうで、公式YouTubeサイトでは無料で見られる作品もいくつかあるそうです。 また、タイ国政府観光庁が日本人向けにタイのBL情報を発信するX『タイBLに恋したい!』も今回発見しましたので、下記QRコードより、ぜひアクセスしてみてください。
ここ数年、筆者は日本人女性がタイのBLドラマに夢中になる現象が気になってしかたありませんでした。タイに住んでいる日本人女性でもBL好きの人を数人知っているからです。どんなところが魅力?どこで作品を知ったの?いろんな気になる話を今回聞くことができまた。なお、今回は写真もA子さんB子さんに提供いただきました。ご協力本当にありがとうございました!(編集部T)
タイ自由ランド 2025年5月5日号掲載
GMM公式YouTube:https://www.youtube.com/@gmmtv
タイ国政府観光庁公式X『タイBLに恋したい!』:https://x.com/thaibllovers?lang=ja
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