新生活の拠点を手に入れた私にとって、次なるミッションは『日用品の買い出し』。特に「今すぐにでも欲しい!」と切実に感じていたのが――夏服でした。
実は、日本から持ってきた衣類はごく最小限。ホテル暮らしの間は、たった2着の服を洗濯して着まわしていましたが、語学学校が始まるとなれば、そうもいきません。
さらに、毎日コインランドリーを利用するとなると、時間もお金もかかってしまう。というわけで、私は服を買いに出かけることにしたのです。
向かったのは、滞在先のラチャプラロップタワーマンションから徒歩20分ほどの場所にある、プラトゥーナム市場。バンコクの服の卸市場として有名で、様々な種類の服が卸値価格で安く売られているのです。
とはいえ、当時の私は、まだバンコクの交通手段をうまく使いこなせず、タクシーもバイクタクシーもバスも「未知の存在」。結局、汗をかきながら歩く道を選ぶことにしました。
灼熱の中を歩くこと20分。ようやくたどり着いたプラトゥーナム市場は、まさに『服の大倉庫』。外から見ると普通の商業ビルですが、一歩中に入るとその景色は一変します。狭い通路の両脇には、びっしりと服をかけたラックが並び、色とりどりのシャツやワンピース、パンツが視界いっぱいに広がっていました。
100バーツ以下の掘り出し物も多く、手が止まりません。サイズ感が日本と少し違ったり、試着できなかったりと、戸惑う場面もありましたが、それもまた『ローカルショッピング』の醍醐味。あれこれ悩みながら、いくつかの服を手に入れることができました。
慣れない場所での買い物、大荷物を抱えての移動――すっかり疲れ果てて、帰る頃にはクタクタになっていました。そして思ったのです。
「ああ……バス、乗れるようになりたいなぁ。」
通り過ぎるバスを横目に、汗だくで大荷物を抱えて歩いたあの1日は今でも忘れられません。

服の卸市場で有名なプラトゥーナム市場
タイ自由ランド 2025年8月20日号掲載
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