注目スポット「ソンワット通り」でカフェを営む日本人女性にインタビュー

(2024年2月20日号の記事です)

今バンコクで最も注目されているエリア、それが「ソンワット通り」。ソンワット通りは100年以上もの前にタイの交通手段だった水上から陸上に変わった場所で、バンコク最古の貿易拠点でもあります。ソンワット通りには、問屋や倉庫、ヨーロッパ様式の建物が多くあります。ソンワット通りが注目されている理由とは、古い建物をリノベーションしたカフェやアートギャラリーがあるからです。新しいものと古いものを融合したという、古き良きというものが今の人々の心にささっているということから、このソンワット通りは今バンコクで最も注目されているエリアと言われています。

そんなソンワット通りには、日本人が営むお洒落なカフェ「ハグズソンワット(HUGSsongwat)」が最近グランドオープンしました。ソンワット通りという日本人経営者が出店しなさそうな旧市街に出店した新たなお店ということで、今回はそのお店を営んでいる小宮奈々子さんにインタビューをしてみました。

小宮さんがタイに来たきっかけとしては、幼馴染がタイに住んでいて、その幼馴染がタイに遊びに来てよ、と言ってくれて、実際にタイに遊びに来たのがきっかけだったそうです。タイでは、ヤワラート周辺などの旧市街を中心に色々な場所を旅行しました。その時にタイのカフェ文化のレベルが高いということに驚きを持ち、自分もここでお店を開いてみたい!チャレンジしてみたい!と思うようになってお店を始めたそうです。小宮さんは日本の福岡県出身で、福岡県で6年、東京で5年ほどカフェで働いていた経験があることから、その経験を活かしてタイでカフェを開いてみようと決めたそうです。

ここで、日本で働いていたカフェについて聞いてみると、好きなケーキを売っていたカフェがあり、その定員さんにケーキは誰が作っているのかと聞くと、厨房に案内されてそのケーキを作っている人と話をしたことがきっかけでそのカフェで働くようになったそうです。小宮さんは自分の好きなケーキをいただく側から提供する側になったのでした。もし、定員さんに質問をしていなかったら小宮さんは客のままだったのかなと思うと、小宮さんのその行動は人生に大きな影響を当たえているのだと思いました。

さて話を戻しましょう。タイでカフェを開く時、大体の日本人経営者は日本人が多い場所などを選ぶと思いますが、小宮さんは日本人経営者が少ない「ソンワット通り」という旧市街を選びました。なぜそこを選んだのかというと、新しいものと古いものが混ざりあい、混沌としているのが面白かったし、なによりも旧市街が好きだったから。また、このカフェの裏から大きな木が顔を出しているのも好きだったからだそうです。確かにお店の裏から大きな木がカフェを覆うように顔を出していて、なんだか木もカフェの一部になっていて素敵だなと思いました。

迫力のある大きな木がお店の上から覆っている

迫力のある大きな木がお店の上から覆っている

カフェの経験がある小宮さんでも、タイという場所でカフェを開く時にたくさんの苦労があったそうで、「お店を開く時に苦労したことは何か」という質問をしたところ、じっくり考えている様子でした。苦労はたくさんありましたが特に苦労したのが、言語の壁だったそうです。小宮さんはまだタイ語に慣れていないので、今でも言語の壁には苦労することがたくさんあるそうです。例えば、お店を造る時に自分が意図していたものとは違うような感じになったり、タイ人スタッフとの日々のコミュニケーションで上手に伝えることが難しかったりするそうです。言語の壁は大きな障害をもたらしていると思いますが、小宮さんの接客や様子を見ていると、お客さんに対してとても丁寧でフレンドリーさを感じたので、言語の壁があったとしても、お客さんが気持よく食事が出来ると思いました。

また、もう一つ思いついたように、食材選びにも苦労したそうです。日本で手に入っていた食材がタイで売られていないということもあり、どの食材を使用したら日本の味に近くなるのか。どの食材と食材を合わせたら良い味が生まれるのかなどを考えながら、何度も試行錯誤をして食材選びをしたそうです。例えば、最初は乳製品と卵を何種類も買ってきて試したり、種類の違う生クリームを合わせた料理を作ったりしたそうです。

そのような苦労はありましたが、「バグズソンワット(HUGssongwat)」は2023年12月2日にグランドオープン。カフェの名前には、自分だけでなく地域の人やスタッフたちみんなで精神的成長できるように助け合うという「精神的成長のために助け合う、Helping Us Grow Spiritual 」という意味が込められているそうです。

多国籍のお客さんがいました

多国籍のお客さんがいました

現在ソンワット通りは、地域のみんなで助け合いながらソンワット通りを盛り上げようと街おこしにとても力を入れているので、小宮さんもソンワット通りの商工会に積極的に参加して一緒に街おこしをしているそうです。それを聞いてカフェの名前に込められた意味が強く伝わりました。日本人である小宮さんもタイ人のコミュニティーに加わることで、徐々にタイ人の環境に溶け込んで行っているのだと思いました。また、苦労したことの一つである言語の壁も、お互いが協力しあっている仲であればそんなことは関係ないのだろうと思いました。

温かい雰囲気のある店内

温かい雰囲気のある店内

お店は開いたばかりですが、観光客だけでなく近所の人も何度もお店に来てくれるそうです。近所でも何度も足を運んでいるのは、小宮さんが目指しているアットホームな空間にすることに繋がっているからでしょう。また、インタビュー中に気になっていた店内に流れる懐かしい日本のシティーポップの曲は、年齢層が高い人が懐かしいと思うような空間にもするためだそうです。確かに、店内はシンプルではありますが、雑誌やカセットなどのレトロなものが綺麗に置いてあったりして、居心地がよかったです。そしてもう一つ気になっていたのが、お店の前に置いてある自転車、店内などに貼ってある自転車のポスター、自転車の一部などが飾ってあることでした。なぜこんなに自転車に関するものが多いのかを聞いてみると、自転車が好きだから!だそうです。

この「自転車」というのもこのカフェの大きな鍵となります。小宮さんは日本にいた時から自転車が好きで、日本で働いていたカフェも自転車を売っているお店でした。その日本で働いていたカフェには、世界中の自転車愛好家が訪れて来るので、様々な国籍の人と交流する機会があり、そこで小宮さんがカフェを開こう!と決めて、タイの空港から降りて最初に会いに行ったタイ人ともそこで出会いました。そのタイ人は、自転車屋さんを営みながら、自転車コミュニティーもやっています。小宮さんもそのコミュニティーに参加し、タイでのコミュニティーを自転車を通して広げていったそうです。小宮さんの自転車好きということが強く伝わっただけでなく、自転車から多くの人とのつながりが出来るのだと思い、自転車は凄い!と思いました。

また、お店の前に自転車を置いてあると自転車好きの人がそれを目にして来店してくれることもあるそうで、自転車という小さなコミュニティーでも大きな力を持つのだと改めて知ったそうです。

壁に掛けてあった自転車のパーツの一部

壁に掛けてあった自転車のパーツの一部

さて、カフェでいただける料理は、良いものを提供したい、コーヒーなどのドリンクも料理もどちらも美味しいものにしたいということで、提供しているすべての料理にこだわりがあるそうです。また、小宮さんの出身地である福岡県の焼き物「小石原焼き」の食器などを使用しているそうです。そのこだわりの料理の中でぜひ食べてほしいのが「アボガドトースト」。正直どこも同じなのでは?と思っていましたが、実際に食べてみると違っていました。ハードパンの上にアボガド、トロトロの卵、パクチーやアカシア(チャオム)などのタイの野菜がのっていて、タイの野菜は少し癖がありますがそれが逆にアボガドの優しい味と濃厚な卵と合っていて、タイを感じることが出来ました。脇に添えてあるカシューナッツソースをつけたりレモンを絞ったりすれば、味がさっぱりとなり、1皿でいくつもの味を堪能することが出来ました。他にも、近所の人から日本食はないのかとリクエストされてメニューとなった「アジフライのおにぎりプレート」や「日本風ビーフカレーとチキンカツ」などの日本の定食があります。それだけでなく、タイは前よりも健康や菜食の人が増えてきているので、ヴィーガンやベジタリアンでもいただけるメニューをより増やしていきたいそうです。

ヴィーガンやベジタリアンでも楽しめる食事を提供

ヴィーガンやベジタリアンでも楽しめる食事を提供

こだわりのデザートも忘れてはいけません。いくつかあるデザートの中でもおすすめなのが「トンカ豆のバスクチーズケーキ」。トンカ豆は見た目はレーズンを大きくした感じで、硬い豆で、バニラと杏仁豆腐を連想させる香りです。このトンカ豆を香り漬けとして入れるのがこだわりだそうです。また、小麦粉ではなく米粉を使用したグルテンフリーなバスクチーズケーキというのもこだわりだそうです。バスクチーズケーキは、生クリームとチーズの味わいが優しく、とても滑らかな舌触りで、添えてあるラズベリーソースをつければ、酸味と甘味が融合した味わいになりあっという間に食べてしまいます。

もちろん、ドリンクなどにもこだわり、コーヒーで使用しているコーヒー豆はエチオピアとケニアのコーヒー豆をブレンドしており、ライトフルーティーな味わいで、スッと喉越し良く飲みやすいです。

優しい味わいのバスクチーズケーキ

優しい味わいのバスクチーズケーキ

日本人好みのコーヒーと、塩とキャラメルが効いたスコーンはおやつにぴったり

日本人好みのコーヒーと、塩とキャラメルが効いたスコーンはおやつにぴったり

ところでこれらのメニューは誰が考えいるのかなと思い聞いてみると、小宮さんの旦那さん、たいきさんがメニューを監修しているそうです。たいきさんはオーストラリアやニュージーランドのカフェでシェフをしていたことがあるそうです。カフェ文化が凄いオーストラリアでシェフをしていたから、コーヒーに合う料理が作れるのかと納得してしまいました。

そして、最後に今後の目標を聞いてみると、このお店に来れば美味しい朝ごはんが食べられる、絶対に行くべきお店、と近所の人に言われるような「ランドマーク」的存在にしていきたいそうです。そのためにも、もっとコミュニティーの仲間に入れてもらえるようにしたいそうです。また、仲良くしてくれる人に恩返しがしたいそうです。

今回インタビューをしてみて、ソンワットという旧市街に店を構えた「ハグズソンワット(HUGSsongwat)」は、地元の人たちと助け合いながらも、夫婦二人三脚でこだわりのカフェを営む素敵なお店でした。まだグランドオープンして間もないですが、近所の人や自転車好き、観光客が集まる注目のお店になっていくでしょう。

営業は火曜日定休の、月曜日から木曜日は8時30分から18時まで、金曜日と土曜日は8時30分から20時までです。MRTフアランポーン駅から徒歩9分。ソンワット通りと、ソイ・チャルンパニット通りが混じる道路の角にあり、お店の後ろから大きな木が顔を出しているのと、お店の前におしゃれな自転車が置いてあるのが目印です。

2階もあり、ゆっくり食事ができます

2階もあり、ゆっくり食事ができます

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ハグズソンワット(HUGSsongwat)の場所