
オレンジラインは、東側のミンブリ(Min Buri)方面から、西側のバンクンノン(Bang Khun Non)方面までを結ぶ、全長約35・9km、全29駅規模の路線。最大の特徴は、都心を東西に横断する点にあります。要所となるのは、タイランドカルチャーセンター周辺で、ここを軸にバンコクの「横移動」を強化する構造となっているのです。
オレンジラインは、当初の計画から見ると、完成時期が大幅に遅れています。在タイ日本人の間でも「そろそろ開通するらしい」と何度も耳にしてきましたが、そのたびに予定は修正され、工事は続いてきました。
現在、事業主体であるMass Rapid Transit Authority of Thailand(MRTA)が示している最新計画では、東側区間(タイランドカルチャーセンター~ミンブリ)が2028年1月開業予定、西側区間(バンクンノン~タイランドカルチャーセンター)が2030年7月ごろ開業予定とされています。

オレンジラインは、Bangkok Expressway and Metro(BEM)とのPPP契約のもとで進められています。
特に西側区間は、歴史地区や既成市街地を通過するため、文化財保全や周辺環境への配慮が不可欠。工事が慎重に進められている背景には、「早さ」よりも「長く使えるインフラ」を重視する判断があるのではないでしょうか。
官民連携(PPP)方式への移行、設計変更、歴史地区への配慮――理由を並べれば、どれももっとも。ただ、市民の正直な気持ちはこうでしょう。
「また延びるのではないか」「本当にこの年に乗れるのだろうか」。
それでも期待が消えないのは、この路線が通る場所に理由があるからです。
オレンジラインは、プラトゥーナム周辺を通過する計画です。
プラトゥーナムといえば、安価な衣料品を扱う市場や卸売りビルが集まり、在住者にとっても「掘り出し物探し」の定番エリア。加えて、この一帯にはプラティナム・ファッションモールもあり、卸売価格に近い服を手軽に探せる場所として知られています。一方、これまで「駅から微妙に遠い」「乗り換えが面倒」と感じていた人も多い場所でした。
何度も乗り換えたり、最後は徒歩で汗をかいたり――「行けば楽しいが、行くまでが面倒」という印象を持つ人も少なくありません。
電車一本でアクセスできるようになれば、安い服を手軽に購入できる服市場が、より日常的な買い物先になると思います。
「時間に余裕があるときに行く場所」から、「思い立ったら行ける場所」へ。これは、生活者にとって大きな変化と言えるでしょう。
オレンジラインの完成は、単に移動時間を短縮するだけではありません。東西移動が現実的になることで、通勤・通学、買い物、余暇の行動範囲が広がります。特にプラトゥーナムのように「行きたいが少し不便だった街」が身近になることで、バンコクでの暮らし方そのものが変わっていくのでしょう。
オレンジラインは派手な観光路線ではありませんが、しかし、完成後にじわじわと効いてくる、生活密着型の路線になると思います。


1面で紹介した建設中のオレンジラインは、バンコクの東と西を繋ぐ横移動の路線ですが、現在延伸工事中のМRTパープルラインは、バンコク北西のノンタブリー県と南のサムットプラカン県を繋ぐ縦移動の路線になります。
クローンバーンパイ駅~タオプーン駅間は2016年に開業しており、現在タオプーン駅から先23・6kmの延伸工事が進んでいます。
2028年の開通を目指していますが、昨年9月、バンコク都ドゥシット区で発生した大規模な道路陥没事故は、パープルライン延伸工事(ワチラーパヤバーン駅)との関連が指摘されており、開通が遅れる可能性があります。延伸区間はタオプーン駅から国会議事堂、国立図書館など官公庁の施設が多いエリアを南下します。民主記念塔駅はカオサン通りにも近く、開業後は観光客でにぎわいそうです。サパーンプット駅付近でチャオプラヤー川の下をくぐり、トンブリー地区に入ります。
ウォンウィアン・ヤイ駅でBTSシーロム線と接続し、次のサムレ駅から先は地上に出て、終点までスクサワット通りの高架線を走ります。
スクサワット通りは、大型スーパーマーケットやホームセンターが点在する、際立った特徴のないタイではどこにでもある幹線道路です。駅の近くには、コンドミニアムが少し建ち始めていますが、古くからの人口密集地なので、巨大ショッピングモールや公共施設などの大規模な開発は難しそうです。
フアランポーン駅に代わり新しいターミナル駅となったバンスー駅周辺が、将来、バンコクの副都心として大きく発展すれば、パープルラインの利用者や沿線の居住者が、増えていくと予想されます。
タイ自由ランド 2026年1月20日号掲載


