【パヤナーク戦記】1.恐怖、太古の蟹神

2020年12月19日

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

真夜中、私は不気味な音でめざめた。私はタイの田舎に住んでいる。田舎といっても日本の田舎とはちょっとイメージがちがう。一番近くのとなりの家までは歩いて500メートルはある。孤立した小さな家に愛犬ジェットと暮らしている。普段は静かで都会の生活よりははるかに快適だ。しかし、夜中に不気味な音を聞くと、急に自分が孤立して生活していることに気づかされる。その音は隣の部屋から聞こえた。床をひっかくような音がして、聞いたことのない生物の鳴き声のようなものがときどきする。私の小さな家はリビングとキッチンをかねた入り口のドアがある部屋と寝室、そして寝室はバスルームにつながっている。私はドアを少しだけあけて、リビングの様子をみてみた。部屋の明かりはついていないのでよく見えなかったが、暗闇の中で巨大な黒い骨のようなものが動いているようだった。そして、それだけではない。巨大な鉤爪が見えた。さらには真っ赤な2つの光り輝く光が見えた。

その巨大な生物は・・・。
そんなはずはない。

しかし、その巨大な生物は私が早朝に近くの池で釣りをしていたときに、釣れた奇妙な蟹にいていた。その蟹は全身が黒く、目が燃えるように赤く、みるからに凶暴な感じのする蟹だった。私は珍しい蟹なので、あとでなんという蟹か調べてみようと思って、家でプラスチックの容器に水を入れて中に入れておいた。不気味な生物はその蟹によくにているのだ。

私は外に出ることができない。しかし、その不気味な生物もリビングから外に出ることはできないようだ。しかし、それなら、どうしてリビングにその巨大な生物がいるのだろうか。あの小さな蟹が突然巨大化したのだろうか。それしか考えることはできない。私はとにかく外に逃げようと思った。そうだ、バスルームには小さな窓があった。私はその小さな窓から逃げることにした。

数日前のある夜のこと、私は月が綺麗なので月を眺めるために庭に出た。満月の月をしばらく見つめて、シンハービールを飲みながら愛犬ジェットの頭をなでていた。傍らには、ビールの缶が5つ、私は心地よく酔っていた。そのときだ、突然、星空が引き裂かれた。夜空に裂け目ができたのだ。私は酔い過ぎて幻覚をみたのかもしれない。それはまるで異次元の裂け目のようだった。その裂け目から無数の小さな光の玉が現れた。私は恐怖を感じ、すぐに家の中に入り、良い過ぎたと思い、すぐにベッドに眠った。外ではジェットが吠え続けていたのを記憶している。

私はバスルームの窓から外に出ることができた。そして、逃げた。近所の家まで走った。無我夢中で走り続けた。途中で疲れたので立ち止まった。そして、何か不思議なことに気がついた。頭上を見上げてみると、そこには巨大なUFOが浮かんでいた。そして、そのUFOから、小さな無数の光の玉が落ちてきた。その光の玉は、空中からおちてくる間に、小さな奇妙な蟹に変身した。そして、地上に落下するやいなや、みるみる大きくなって、巨大な蟹のような生物になった。隣家に行く途中の道に、その不気味な巨大な蟹のような生物がいた。気がつくと私はその巨大な生物で囲まれていた。もう絶望的な状態だった。私といっしょに走った愛犬のジェットは近づく巨大な蟹のような生物に勇敢にも戦いを挑んだ。しかし、巨大な鉤爪に挟まれてしまった。私はそのすきに走り続けた。心の中で祈り続けた。あんな不気味な生物に食われて死にたくはなかった。祈りながら、いつの間にか私は気を失っていた。

左の腕に激痛を感じた。私は目を覚ました。私は庭のハンモックで寝ていた。左の腕には、あの奇妙な小さな蟹がいて、鉤爪で私の腕を挟んでいた。私はいつの間にか、ハンモックでシンハービルを飲んでるうちに眠ってしまったようだ。私は笑った、安心した。

”私は太古の神、この地上を再び支配するためにやってきた”
どこからともなく声が聞こえた。
しかし、私のまわりには誰もいなかった。
蟹がテレパシーで話しているのだ。
”頭上をみよ”
私はその言葉にしたがって空を見上げた。
そこには、巨大なUFOが浮かんでいた。
そして、無数の小さな蟹が雨のように降っていた。

続く

 

今日の名言

記憶と可能性は現実よりも遥かに恐ろしいものだ。

H・P・ラヴクラフト

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無解行末那

無解行とは、信じることを大切にしたいという気持ちです、末那は九識論の末那識、自我にとらわれて世界をゆがんだ認識で観ている自分の姿。唱題行で心を磨き、理想郷、九識心王真如の都をめざします。人工知能、Python3、チェス、SF、Vtuberなど進化するもの、人の心の進化に興味があります。